ひとりひとりが主体的に動ける組織を作りたいと思っていた

【SW】サムシングホールディングスの、「サムシング」の由来を教えていただけますか?


【前社長】実はどんな事業をしようかということについては、いくつか考えていることはあったのですが、実際に何をしようかと決めて起業をしたわけではありませんでした。

 サムシングには、「神秘的な」、「キラっと光る」という意味があり、「サムシングボーイ」と言うと「なかなか神秘的で魅力のある男だよ」ということになります。そういうキラッと光るような、魅力のある会社になりたいなと思って名づけました。


【SW】そして地盤改良というビジネスを始められたわけですが。


【前社長】起業の理由が二つありまして、一つは自分の中の価値観の問題なのですが、ひとりひとりが主体的に動ける組織を作りたいと思ったんですね。

 以前は建設系の商社・ワキタという大きな企業に勤務していて、非常にやりがいのある仕事をさせていただいていました。ただ、どうしても組織というのは上が重くなってくると、若い人たちには活躍できるフィールドがなかなかないという状態になります。
 人生の中で一番時間を費やすのは仕事の場なので、そこで主体的に動けないということになると、それがいい人生なのだろうかと、そんなことを考えていたのですが、上を見ても偉い人がいっぱいいますので、すぐにこの組織を自分の力で劇的に変えることはできないなと。であれば自分でそういう、自分が主体的に動けるような会社を作ろうと思ったのが起業のきっかけの一つでした。

 とはいえ、組織を作るにしてもビジネスがないと成立しないんですよね(笑)。実は、私は独立する前に、商社で地盤改良の分野で機械を卸したり、販売をしたり、開発をしたりと、ユーザーさん(ハウスメーカーや工務店)と地盤改良業界の間でビジネスをさせていただいていました。
 その時ユーザーさんから「地盤改良の業者さんはいったいなにをやっているのかがわからない」という声があがりました。

ユーザーのニーズと業界のミスマッチ


施工機 【前社長】住宅建設の業界というのは基本的には委託です。ハウスメーカーさんは基本的には営業と工務の管理しかやりませんので、四六時中現場についているわけではなく、業者に委託をして信用関係の下で工事のチェックをし、報告書を見るわけです。
 ところが地盤改良だけは「終わった」と言われて現場に見に行っても何が行われたのかはまったくわからないんですね(笑)。躯体であれば「柱をこんなふうにつけました」と言われて、大工さんが仕事をしている時に行かなくても、夕方に現場に行けば、「ちゃんと柱がついているな」とか(笑)、確認ができますが、地盤調査や地盤改良は終わってから見に行っても地面が少し荒れているだけで、何をやっているかわからない(笑)。
 さらに、どう考えても2日はかかるだろうな、という仕事が、2日目に見に行くともう誰もいなくて終わっていると…。
 そこでハウスメーカーさんの側から「信用できないので、なんとか現場の監督が立ち会わなくても管理できるような、そういう装置を作ってくれないか?」と、委託を受けて作ったんですね。それが今、当社で標準的に使っている「施行管理装置」です。
 データを1秒ごとにとって、こんな工事をしましたということが「見える」、そんな装置なのですが、ユーザーさんから見るとそれにはニーズがあって、実際に作ってお見せすると「これを地盤改良の業界に売ってください、これは必ず売れるから」ということで売りに行ったわけですね。
 すると、その地盤改良の業界で昔から仕事をされている人たちから、「おまえたちがこういうものを作るからだんだん仕事がやりにくくなるんだ」というようなことを言われましてね…。(苦笑)


【SW】「見えない化」を図っていたのに、と言うことですね。(笑)


【前社長】そうですね(笑)。「あまり情報はオープンにしたくないんだ。コストの競争もあるし、見せたくないこともいろいろとあるので、こういうものを作るとやりにくくなるんだ」と言われまして…。2年くらいかけて作ったんですが1台しか売れなくて、大失敗でした。
 ただし、ユーザーのニーズと業界のしていることのミスマッチが完全にそこにあったんですね。その時、ユーザーさんの求めるモノを提供していけば、支持をされるのではないかな、というビジネスチャンスを見つけました。

 そのことと先ほど話した自分の中の価値観の問題、ひとりひとりが主体的に動ける組織を作りたいという、その2点があいまってというのが起業したきっかけでした。


【SW】商社にお勤めになっていた時の様々なノウハウがあるとはいいながら、実際に創業された後の販売先は商社の時に取引をされていたチャンネルそのものではないわけですよね。その販売先の開拓はどんなふうにされたのでしょうか?


【前社長】以前の会社で一緒にビジネスをしていたシロアリ駆除の上場企業があったのですが、地盤改良のビジネスに行った理由の一つには彼らからの誘いもあったのです。彼らはシロアリ駆除をやっていて、次の事業の柱がほしかったんですね。
 1997年(平成9年)に独立して、2000年(平成12年)に住宅の地盤改良がだんだんとビジネスになりそうだというマーケット環境が見えてきたところで、その会社から「一緒にやらないか?」と相談されたんですね。彼らは地盤改良に関するノウハウは何もない、一方で私は商社にいた時代に関係するビジネスをやっていたので人脈もあるしネットワークもある。
 そこで彼らが元請けをするから下請けとして設計をしたり工事をしたりという提携をしないかという話をいただいたんです。
 ですから、実際、営業に関しては創業して2年間はほとんどしませんでした。その会社に代理店として営業をしていただいて、そこから工事をもらって、私たちは設計と施工と管理を請け負わせていただくという関係でしたので、受注関係に関して、創業期にはそんなに苦労しませんでした。上場企業だった彼らのネットワークを使って売上げを確保できました。


【SW】その会社は従来のチャネルを攻めればよかったということですか?


【前社長】そうですね。彼らはシロアリ駆除の会社ですから工務店さんやハウスメーカーさんに毎日営業に行っています。そこに「新しい良いサービスがあります」と、営業に行って、工事を受注していただいていたんですね。


【SW】予想通りの展開でしたか?


【前社長】ところが3年目にその会社が潰れまして。たいへんだったのですが、そこで、私たちがユーザーさんのところに直接やらせいただけないかとお願いして、何とか引き継ぐことができたんですね。


【SW】順調に引き継ぎができたのは「地盤の見える化」を含めた技術やサービスなどが大きかったんでしょうね。


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